Talk Vol.4

スポーツが繋ぐ無限の可能性 (中)

ゆるスポーツ
コピーライター/プロデューサー 澤田智洋

一番苦手なものがスポーツだったという澤田智洋さん。
様々なゆるスポーツを考え出す過程にも、澤田さんならではの視点がーー。

二宮:それはいい循環ですね。

澤田:スポーツを考えるときのプロセスとしては、ある課題に対して「スポーツを創ることで解決してくれませんか?」という依頼から始まります。それに対して適切なチームを作り、まずはアイデア出し会議を行います。いいアイデアが出たら、次はグラウンドやコートで試してみる。そこでまたルールをブラッシュアップして、どんどん一般参加者も入れてトライアルをしてスポーツとして煮詰めていく。

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二宮:審判も必要になってきますね。

澤田:はい、審判も技術が必要です。ゆるスポーツなので、まずは審判が一番笑ってくださいとお願いしています。また、新しいスポーツに対してみんな戸惑っているので、なるべく褒めて、アドバイスをしてくださいと。子どものスポーツ体験会などと同じようなファシリテーション法ですね。

今矢:仮に「ハンドソープボール」だと、どのような課題解決に提案されているのですか?

澤田:ハンドボールの元日本代表キャプテンの東俊介さんから「ハンドボールをもっと普及させたいんです」と話をいただいたんです。そこで「ゆるいハンドボールを創りましょう」と提案しました。ハンドボールは僕も怖いイメージがあって、鬼軍曹みたいな人たちがどんどん飛びかかってくるわけじゃないですか。そんな状況に自分を置きたくないなと思っちゃうんです。だから「ゆるく、ポップにしてやればいいんじゃないですか」と。ハンドソープボール体験会は、いつも2時間コースなんですが、前半1時間はハンドボール選手を呼んでハンドボール体験会をします。後半はハンドソープが出てきてハンドソープボール体験会。そうすると余韻としては、「ハンドボール面白かったね」となるんですよ。

二宮:なるほど。それでハンドボールの普及に繋がると。

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澤田:そうなんです。「ハンドソープボール」はハンドボール普及のために作っています。あとは「ブラックホール卓球」も、卓球をゆるくポップにするというコンセプトで開発しました。中心をくり抜いたラケットを使用します。ブラックホール(穴)のサイズは4種類(S、M、L、LL)あるんです。シングルスの場合は、11点で1ゲーム先取。3点取るごとに穴が大きくなってくる。勝ちに近付くと穴はLLサイズになるので、接戦が生まれやすい構造になっています。

今矢:上手い選手ほど、ガンガン抜けるんでしょうね。

澤田:プロの卓球選手もすごく抜けるんです。

二宮:逆に言えば中心に当てる練習にもなりますよね。

澤田:その通りです。実は「ハンドソープボール」もハンドボール選手のトレーニングになるのでは、と言われています。海外のハンドボール選手は全身を使いながらシュートをするのですが、日本人は手や腕だけで投げているケースが多い。でもツルツルだと手だけでは持てないので、全身をうまく使わないといけません。

今矢:たとえば「ハンドソープボール」だと、ハンドボールよりも敷居が低く、みんなができる。そのスポーツにピンと来なかった人たちも、これをひとつのゲームとして楽しめることはすごくいいですね。

澤田:「ハンドソープボール」もふだんはスポーツをやらない方が多く参加します。この競技は、今までのスポーツとは明らかに違う気配がしていますから。ただ、人によって「自分でもできるスポーツ」の捉え方は違うので、スポーツの多品種化は大事だと思っています。

<Vol.5に続く>

ゲスト

澤田智洋(さわだ ともひろ)

1981年7月14日生まれ。コピーライター/プロデューサー。スポーツや福祉のビジネスプロデュースを多く手掛ける。世界ゆるスポーツ協会代表。義足女性のファッションショー「切断ヴィーナスショー」のプロデューサー。『R25』で漫画「キメゾー」連載中。

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