Talk Vol.23
セブンズの未来を担う(下)
7人制ラグビー日本代表男女総監督兼男子ヘッドコーチ
岩渕 健輔
第10回のゲストは7人制ラグビー男女日本代表総監督兼同男子日本代表のヘッドコーチを務める岩渕健輔氏です。自国開催のW杯、そして東京オリンピック・パラリンピックを控える日本ラグビー発展のカギとは――。
【ラグビー独自の文化】
二宮: サッカーなどに比べ、ラグビーはルールが複雑だと感じている方もいます。岩渕さんのような専門家に解説してもらいながら観戦できる。そんな観戦スタイルも面白いのでは?
岩渕: そうですね。ヨーロッパではプロチームが解説者付きのサービスを行っています。試合に出ていない選手がホスピタリティボックスに行く。試合後も出場した選手が行って、その日の試合について話します。私もイギリスのチームでプレー経験がありますが、試合後にチームに指示された場所へ行き、語りあいました。
二宮: 具体的にはどういう話を?
岩渕: ラグビーに詳しいお客さんからは「なぜあそこであんな判断をしたんだ?」と厳しい質問もあります。そういう意味でもいろいろ鍛えられる場でしたね。
二宮: 説明責任の力がつきますね。
岩渕: ええ。自分のプレーが良かった日は当然、行きやすいんですが、ダメだった時はとても行きにくい……。
今矢: そういう環境ではホームゲームともなると一段と気合いが入り、下手な試合、プレーはできなくなりますね。
岩渕: そうですね(笑)。ただヨーロッパと違い日本のラグビーでは、そもそもホスピタリティボックスがほとんどありません。
今矢: 確かに他の競技でも少ないですよね。
二宮: 選手と触れ合うことでお客さんは喜びますよね。日本でもぜひ取り入れてほしい。ラグビーは試合後にチーム同士で交歓会を行います。ノーサイドの精神で、これはとても良い文化ですよね。
岩渕: 逆にプロのチームだと交歓会、いわゆるファンクションが減ってきています。こうした文化はテストマッチなどの国際試合でもなくなってきているんです。W杯期間中はなかったと思います。
二宮: どちらかというとファンクションはアマチュアの古き良き文化なんですよね。
岩渕: 元々はそうなんです。先日、北九州で女子セブンズの国際大会がありました。ファンクションでは日本の選手たちが他国の選手たちと交流を図っていました。彼女たちは将来的に日本のラグビーを支える存在になるかもしれません。ファンクションを通じて友情が生まれ、コネクションができる。この文化は日本が率先して取り戻していきたいですね。
二宮: ラグビーには世界ランキングとは別に階層区分があります。ニュージーランドや南アフリカ、オーストラリアなど強豪国・地域をティア1と呼んでいます。この序列はなかなか変えられないものですか?
岩渕: これは日本が強くなってW杯で優勝しても変わらないかもしれません。
今矢: 歴史的な背景が影を落としていますね。
岩渕: はい。やはりティア1にチャレンジするというところまでいかないと、世界の舞台では戦っていけないと思います。
二宮: 来年のW杯で上位進出を果たし、日本が大会を成功させたら流れが変わってくるかもしませんね。
岩渕: 19年W杯、20年オリンピックの結果次第で、その先の30年、50年の日本ラグビーの未来が決まると感じています。私に課されたミッションは簡単ではありませんが、強化の責任者として、力を尽くしたいと思います。