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Talk Vol.14 四国に秘める無限の可能性(上) IBLJ取締役会長 森本 美行 第6回のゲストは四国アイランドリーグPlus(アイランドリーグ)を運営するIBLJの森本美行取締役会長です。 四国4県を舞台に行われる独立リーグ・アイランドリーグは今シーズンで13年目を迎えています。四国には無限の可能性がある――。 森本会長が見据える独立リーグの未来とは? 二宮清純: まずは今シーズン、独立リーググランドチャンピオンシップでアイランドリーグ徳島インディゴソックスがBCリーグ信濃グランセローズを下し、3年ぶり2度目の独立リーグ日本一に輝きました。おめでとうございます! 森本美行: ありがとうございます。2007年にスタートしたグランドチャンピオンシップで、リーグとしては2年ぶり7度目の優勝となりました。 二宮: ところでアイランドリーグの経営に関わるようになったのはいつからでしょうか? 森本: 代表取締役社長になったのが昨年です。出資からだと13年前から関わっています。社外取締役としては2013年までいました。経営の状況は見ていましたが、実際に経営の指揮を執ったのは昨年からです。 二宮: 13年前に関わるようになったきっかけは? 森本: 僕がデータスタジアム株式会社の代表取締役社長に就任した03年頃からは、地上デジタルビジョン放送が始まった時期で「スポーツはニューメディアのキラーコンテンツとして将来、事業機会がある」と言われた時代で資金が集まった時期だったんです。その時、アイランドリーグ創設者の石毛(宏典)さんがちょうど“独立リーグをつくりたい”と動き出し、資金集めをしていたタイミングだった。社会人野球が疲弊し、野球の受け皿がなくなってきた中での独立リーグ創設。データスタジアムとしても野球が普及して市場が大きくなることはビジネスチャンスとなりますから。そこで出資をさせていただくことに決めたんです。 今矢賢一: 創設を経営面からサポートしたんですね。 森本: そうですね。設立当初はリーグに対していろいろな企業がスポンサーとして手を挙げて頂きお金も集まりました。でも最初のブームと言うか期待感が薄れると、得られる協賛金がどんどん減ってしまっていました。僕は去年から社長になりましが、「もう1回、アイランドリーグの価値を考え直そう」というのがスタートでした。 今矢: 前向きに再構築をしなければいけないステージに来ているということですね。 二宮: 会社としてはIBLJがあり、各球団は独立しているわけですよね。 森本: スタートしたばかりの頃はアイランドリーグと各球団をひとつの経営母体で運営するシングルエンティティという形式で経営していました。当初こそ協賛金は集まっていましたが、地方における野球独立リーグの経営という初めての大きなチャレンジをした結果、リーグと球団合わせて何億円という負債が生まれてしまい、それをひとつの組織でカバーするのが難しくなってしまいました。試行錯誤の末、リート各球団を分社化するかたちをとりました。 二宮: 独立採算制にした上で、リーグに入った資金のいくらかを分配すると? 森本: ええ。リーグとしては配分比率を設定し、各球団に分配します。理事会の運営もやります。チャンピオンシップなどの場合はBCリーグ、その他フェニックスリーグの際はNPB等対外的な交渉も行います。あとはテレビ中継の場合は放映権、各種権利のマネジメントも管理しています。 二宮: アイランドリーグ全体の価値を上げるために、この先考えられていることは? 森本: 今までできたこと、できなかったことがありました。できたことは13年続けてこれたことと、年間約150試合を行って、そこに毎年平均で約500人から600人のお客さんを集められるようになったこと、60人弱の野球選手をNPBに排出できたことです。僕は、これからのスポーツビジネスにおいて時間×頻度、つまりスポーツへの接触時間は大きな要素だと思うんです。年間約150試合を開催できるのはウチの最大の武器です。その事業機会をどうすれば最大化できるか。3時間×約150試合分、球場にはビジネスチャンスが転がっています。試合があればローカルメディアも取り扱いますし、今年高知ファイティングドッグスにマニー・ラミレス選手が来たように認知度があれば全国紙やテレビも取り上げてくれるでしょう。メディアをどういうふうに活用するか、SNSの活性化ついては今後の課題でしょう。 二宮: これまで築いてきた財産を今後に生かしつつ、新しことにも取り組んでいくと? […]
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Talk Vol.13 バスケットボールクラブ経営の現実と未来(下) 千葉ジェッツふなばし代表取締役社長 B.LEAGUE副チェアマン 島田 慎二 Sportful Talks、第5回目のゲストは登場するのは島田慎二さん。男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」の千葉ジェッツふなばしの代表取締役社長を務め、チームは昨季リーグNo.1の観客動員をマークしました。その手腕が認められ、今季からは副チェアマンも兼任。チーム運営とリーグ改革の両輪を担う島田さんが語るバスケットボールクラブ経営の未来とは――。 【“二足のわらじ”の苦労】 二宮: B.LEAGUEの初代チェアマンである川淵三郎さんは島田さんを昔から買っていました。島田さんは今年から千葉の球団代表を務めながら、B.LEAGUEの副チェアマンにも就任しました。大変でしょう? 島田: 当然、大変です。イレギュラーなことですし、海外でもあまり例を見ないケースだと思います。月火はジェッツにいて、木金はリーグ。水土日はどちらもという生活をしています。どちらも全力投球しているのですが、周りは専業でやっている。専業でないことの影響はあるかなとも思います。どちらかに100%傾ければ、ジェッツをもっと飛躍させることもできますし、リーグはもっと改革できる。そういうもどかしさはあります。 二宮: 心配なのは、“二足のわらじ”を履くことで利益相反が生じてしまわないか、ということです。意図していないにも関わらず……。 島田: そうですね。例えばリーグがある会社とパートナー契約を結ぶ場合、その会社と手を組むことがリーグにとって良い選択でも、私と関係のある会社であれば他の人はよく思わないかもしれない。それで別の会社を選ぶようなことはしませんが、利益相反に対する目は思っていた以上に厳しいですね。ただ私は遠慮したら、この世界にいる意味がないと思っています。私は元々バスケットボール界にいたわけではないですし、そこにいなかったからこそできてきたこともたくさんあります。それが私の良さだと割り切っています。 二宮: スポーツでは競争と協調が重要なコンセプトだと思っています。競争しないといけない一方で、共栄・共存も図っていかないといけない。しかし、そのさじ加減が難しい。 島田: 私はビジネスマンなので、ビジネスの視点からアプローチしていこうと考えています。今やっていることは「島田塾」という各クラブとの勉強会です。ちょうどB1、B2の半分である18クラブが参加しています。そこで経営に対する意識改革をやっていく。経営がしっかりすることとお客さんを呼べることの因果関係はすごくあると思っています。私が力を入れているのは全クラブを底上げすることです。 今矢: 勉強会は各クラブと1対1なのか、それとも複数のクラブが集まってそれぞれの情報を共有するようなかたちをとっているのか……。 島田: 3つのステージを分けています。ファーストステージはジェッツの事務所に来ていただいて、ウチの社員教育や運営ノウハウを説明します。セカンドは数クラブに分けて、集客やスポンサー集めはどういうアプローチをすべきなのかを話し合う。サードステージは実際にそのクラブに出張するという段階を踏むようにしています。 二宮: 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催をピークにして、そこから日本のスポーツはダウンサイジングに向かうという意見もあります。人口も減り、スポーツのパイそのものが縮小していくのではないかと……。 島田: それは有り得ると思いますね。今、バスケ界はオーバーバリューになっています。BjリーグとNBL合わせて7億円ぐらいだったのが、今は事業規模が50億円。世界のバスケットボールリーグを見ても3番目ぐらいになっています。でもリーグが世界のリーグと勝負できるかと言ったらそうではない。現実を見なきゃいけない。私もそういうスタンスでいます。 二宮: 生き残るためには何が必要でしょうか? 島田: 私は現在の36クラブの経営を底上げし、経営戦略を確立することで変わっていけると思っています。バスケの魅力は経営者に親会社から出向社長がないので、各クラブの本気度がすごい。ここが副チェアマンを引き受けた一番の理由なんです。規模は小さくても皆が命懸けでやっている。そこに知恵を授け、力を授けることで発展すれば新たな地域産業が起こるんじゃないかと可能性にかけて関わっています。 【アリーナ文化の可能性】 二宮: 日本はまだアリーナ文化がないですよね。アリーナの利用価値は、ヨーロッパの場合は病院や介護・保育施設、スーパーマーケットが隣接している。いわゆるワンストップとオールインワンです。そこに皆が集う。少子高齢化の時代、アリーナは市民生活のインフラとしても重要な役割が期待されています。 島田: そう思いますね。今いくつか動き始めているところもあります。ただ全部が全部、新しいアリーナを新設できるわけではありませんので、リノベーションしなくてはいけません。元々あるアリーナを改修してスマートアリーナに変える。今は1万人アリーナ、2万人アリーナという声もありますが、私は新設よりもリノベーションがキーになってくるのではないかと思っています。 […]
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Talk Vol.12 バスケットボールクラブ経営の現実と未来(上) 千葉ジェッツふなばし代表取締役社長 B.LEAGUE副チェアマン 島田 慎二 Sportful Talks、第5回目のゲストは登場するのは島田慎二さん。男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」の千葉ジェッツふなばしの代表取締役社長を務め、チームは昨季リーグNo.1の観客動員をマークしました。その手腕が認められ、今季からは副チェアマンも兼任。チーム運営とリーグ改革の両輪を担う島田さんが語るバスケットボールクラブ経営の未来とは――。 【チームの再建】 二宮清純: 島田さんは千葉ジェッツの球団代表となって6年目を迎えます。一時は経営難に陥ったチームを再建しました。今季からはチーム名が千葉ジェッツふなばしに変わりました。船橋は競馬場、オートレースと公営ギャンブルが盛んな印象もあります。一方でプロ野球団やプロサッカークラブの本拠地はありません。 島田慎二: 千葉県にはプロ野球の千葉ロッテマリーンズ、プロサッカーのジェフユナイテッド千葉・市原と柏レイソルがあります。だからこそ船橋市にしたんです。千葉市と船橋市のどちらかを本拠地にするか考えた時に千葉市の方がアリーナのサイズは大きいですし、県庁所在地ですから人口も多い。その他にもポジティブな要素はいっぱいありました。それでもプロチームの空白地帯という船橋市のポテンシャルに賭けてみようと思って決断しました。 二宮: 一昨年はホームゲームの累計観戦者数は10万92人。昨季は13万5097人といずれもリーグ最高の観客動員を記録しました。右肩上がりですね。 島田: なかなかここからは上がりづらいんですけどね(笑)。船橋アリーナの占有率が95%ぐらいまできたので、上がり幅という意味ではインパクトのあるものは見せられなくなってきています。 今矢賢一: それにしても占有率90%超えはすごい!   島田: あとは立ち見席を増やしていくしかないですね。今季からは2階自由席を2階自由立見席という名称に変えようと思っています。あとは指定席も増やします。昨季まではいい席を取ろうとしてお客さんが試合開始5時間前から並ぶこともありました。今後はチケット単価が少し上がりますが、試合前の混雑を少しでも緩和できることを優先しました。 【キャラ化とプロ化】 二宮: 今季から新たな試みとしてチアリーダーとプロ契約を結んだそうですね。プロ化することでもっとファンサービスに力を入れたいという意図でしょうか? 島田: ウチのコンセプトとしてはすべてをキャラ化しようと考えています。チアリーダーについてはもう少し目立たせてあげたいと思っていたところで、「プロ化しましょう」と提案があったんです。オフは選手も代表に選ばれれば、チームで地域活動する時に人手が足りなくなることがあります。マスコットキャラクターもいますが、選手以外に動けるキャラクターが欲しい。今はチアリーダー13人のうちの3人をピックアップしてアイドル化しようと考えています。彼女たちを見たくて会場に足を運ぶようになったらいいなと。それにキャラ化はチアリーダーにこだわった話ではなく、ジェッツには小回りのきく広報やモッパー(試合中に飛び散った汗などをモップやタオルで拭く係)もいます。ウチのモッパーはキビキビしていて、すごく動きが速いんですよ。その子たちをキャラクターにして、取材などでメディアにも出てもらっています。 二宮: それはユニークな試みですね。 島田: お客さんが選手だけを見たいと思うのではなく、スタッフも含めて誰かに感情移入できる空間をつくりたいというのがコンセプトです。お客さんが会場をウロウロしていても、誰かとコミュニケーションが取れて楽しい空間にしたいんです。 今矢: チームだけでなく地域のチアリーダーみたいな感じですね。僕らがサポートしていたアスリートの中にNFLデンバーブロンコスのチアリーダーを3年間務めた方がいます。彼女が会場で踊っている時間は全体の一部でしかない。地域のコミュニティセンターや社会活動に参加していると聞きました。 島田: まさにそういう世界ですね。 二宮: つまりは“まちのアイドル”ですね。 […]
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Talk Vol.11 ワクワクやドキドキをスタジアム・アリーナに(下) 建築家 仙田 満 Sportful Talks、第4回目のゲストは建築家の仙田満さん。建築家として新広島市民球場(マツダスタジアム)の設計を手掛けるなど、様々なスポーツ施設建造に携わってきました。「遊び心」を大切にする仙田さんが考えるスタジアム・アリーナの理想像とは――。 【失われつつある遊び場】 今矢: 僕は中学校から高校、大学とオーストラリアに住んでいました。オーストラリアの公園の遊具は日本の公園よりも明らかに子どもたちがワクワクするつくりになっているんです。パッと見ではどのように遊ぶのかわからない形状をしている遊具でも、子どもたちが工夫して遊んでいる姿を見掛けます。 二宮: 日本は遊具はだいたい決まっていて、“これで遊びなさい”という画一的な印象がありますね。 仙田: そうですね。日本は1990年代以前に「児童公園」というカテゴリーがあったのですが、今は「街区公園」に名称を変えています。それは高齢化社会になって公園を大人が占拠してしまう現状を追認してしまった。それなのに日本政府は子どもの環境を守ろうとするのではなく、名前を変えてしまったんです。だから公園の利用率もこの30年間下がっています。 二宮: それは寂しいですね。 仙田: でもようやくここにきて公園の利用率アップのため、公園内に保育園をつくったり、コーヒーショップが設置されるようになりました。スポーツ施設もつくれるようになり、楽しい遊び場に少しずつ変わってきています。 今矢: これはやはりルールが変わってきているということですか? 仙田: 法律自体はそれほど変わってはいないのですが、運用の仕方が変わってきたんだと思います。 二宮: 日本の公園はブランコ、滑り台、砂場による3点セットという印象です。これは何か決まりがあったのですか? 仙田: それが標準タイプだったんです。 二宮: どこに行っても同じという“金太郎飴”のようで個性に欠けますよ。それともうひとつ、よく言われる「都市公園法」ですよね。この法令には改善の余地があると言われています。 仙田: 原則的には自治体の長の権限に委ねられていると言われますが、原則は商業的なものは排除されます。例えば日比谷公園には松本楼のように戦前から有名なレストランがありますが、一般の公園にはつくれません。 二宮: もったいないですね。 仙田: 本当にそうです。そういったものを積極的に建てることによって公園の利用率が上がりますから。 今矢: 今、東京の二子玉川公園には、コーヒーショップのスターバックスが入っています。週末は結構人で溢れています。 仙田: 富山にある富岩運河環水公園は、私も設計をお手伝いしたのですが、ここもスターバックスが入っていて「世界一美しいスターバックス」と言われているそうです。スターバックスができたことで、年間70万人の利用者が140万人と2倍になった。今や都市的観光地になっています。やはり飲食は大事ですね。 今矢: そうですね。オーストラリアはマクドナルドの中にちょっとした遊具がついていて、子どもと遊べるスペースがあります。誕生日会があれば、そのエリアだけ貸し切ることもあるんです。 […]
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Talk Vol.10 ワクワクやドキドキをスタジアム・アリーナに(上) 建築家 仙田 満 Sportful Talks、第4回目のゲストは建築家の仙田満さん。建築家として新広島市民球場(マツダスタジアム)の設計を手掛けるなど、様々なスポーツ施設建造に携わってきました。「遊び心」を大切にする仙田さんが考えるスタジアム・アリーナの理想像とは――。 【開放的な空間は“閉所恐怖症”だから!?】 二宮清純: 仙田さんは建築家として数々の作品を設計されました。プロ野球・広島カープの本拠地である新広島市民球場(マツダスタジアム)は近年の代表作のひとつです。 仙田満: 20数社が応募したコンペで、私が出した提案が運良く採用されました。コンセプトは「ダイナミックボールタウン」ということで、元気を喚起する野球場、町に開く野球場をイメージしました。従来の野球場は閉鎖的で、中で何をやっているかが外からではよくわからなかったんです。 今矢賢一: 言われてみると、確かにそうですね。 仙田: 私は建築家なんですが、若い頃より閉所恐怖症なところがあるんです(笑)。狭いところが苦手で、壁に囲われているのもダメなんです。だから若い頃はエレベーターや地下鉄にもなかなか乗れませんでした。 二宮: マツダスタジアムは確かに開放的ですね。その開放感からか、球場に入るとすぐに“ビール飲みたいな”と思うのですが、その原点は閉所恐怖症だったとは(笑)。デザインする設計者の思想やマインドが作品に反映されるんですね。 仙田: ええ。それと私は中日球場(ナゴヤ球場)が新幹線の車中から見えたのが好きだったんです。だからマツダスタジアムも新幹線が広島駅に到着する時、11秒間覗けるというつくりにしました。 二宮: 11秒間という時間も全部計算済みだったんですね。 仙田: はい。計算しています。広島駅は新幹線の停車駅なので、到着するまでに減速することも考えました。 二宮: 確かに乗客が「あ、野球やっている」と気付けるくらいの時間はありますよね。 今矢: メジャーリーグのボストン・レッドソックスの本拠地フェンウェイパーク周辺にもスタジアムをフェンス越しに眺められるバーがありますよね。スタジアム外にいる人にも少しでも興味を持たせられる工夫はすごくいいなと思います。 二宮: 外から中の様子を少しでも覗けることで、“何が行われているんだろう”というドキドキ感がありますよね。 仙田: そうですね。これは野球場だけでなく、あらゆる施設に必要なものだと思われます。 二宮: 閉鎖的だと“何が行われているのだろう”と、少し不気味でもありますよね。 仙田: ええ。お金を払って入場しなくても、球場の雰囲気をほんのわずかでも感じることができたら“いつかは見たい”と思うかもしれませんからね。 二宮: 新球場効果は大きいですね。一時(2003年)は約95万人まで落ち込んだ観客動員数も、ここ2年は200万人を超えています。 仙田: 他にもメインコンコースへのスロープはゆったりとした勾配となっていて、そこを登っていくとグラウンドがバンと見えるようになっています。 […]
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Talk Vol.8 オールインワンでスポーツを盛り上げる(上) 弁護士/東京大学理事 境田 正樹 Sportsful Talk、3回目のゲストは境田正樹さん。 弁護士として活躍する傍ら、「日本スポーツ基本法」の制定、男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」の立ち上げにも尽力されました。 様々なスポーツ団体を見てきた境田さんが見据えるスポーツの新たな可能性とは――。 二宮清純: 境田さんはスポーツのガバナンス整備に法律の専門家として尽力されてきました。2011年より施行された「スポーツ基本法」にも関わっていらっしゃいますね。今年3月にはスポーツ庁より第2期のスポーツ基本計画が発表されました。第1期との違いはどんなところにあるのでしょう? 境田正樹: まず第一に、スポーツの成長産業化、具体的にはスポーツ市場規模5.5兆円を2020年には10兆円に、さらに2025年には15兆円へ拡大することを目標として掲げたことです。そのために、スポーツの産業化、地域活性化の基盤としてのスタジアム・アリーナづくりを推進することも重要になってきます。また大学スポーツについても、「国は、大学及び学生競技連盟を中心とした大学横断的かつ競技横断的統括組織(日本版NCAA)の創設支援することにより、大学スポーツ振興に向けた国内体制の構築を図る」として具体的な大学スポーツの振興策を目標として掲げたことも大きな特徴の1つだと思います。 今矢賢一: 他にはどんなことでしょう? 境田: あとは障がい者スポーツの推進に関しても前回計画より充実した内容になっていると思います。そのほかでは、スポーツ団体のコンプライアンスの強化、ガバナンスの徹底、アンチ・ドーピングの推進などについても前回計画より充実した内容になっています。やはり昨今の社会情勢や経済情勢が色濃く反映された内容になっています。 二宮: 海外ではプレータイムを契約で保証するようなかたちがあり、アスリートの権利のようにもなっています。日本版NCAAをつくるのであれば、今後はそういったことにも対応していかないといけませんね。 境田: そうですね。今のスポーツ界は競技団体ごとの縦割り構造で、横串の連携は十分ではありませんし、各大学もスポーツに関して他の大学と協働・連携してスポーツ振興に取り組むことが、これまであまりありませんでした。ここの横串、縦串を刺して、競技団体と大学が一体となってスポーツの振興を図ろうというのが日本版NCAA構想です。なかなか実現は簡単ではないですが、100近いスポーツ団体と800を超える日本の大学の総合力、そして産業界のパワーを結集すれば、日本のスポーツ界全体を、さらには日本の社会全体を活性化することができる大きなチャンスになると捉えています。是非、成功して欲しいと考えています。 二宮: 横串を刺す上で一番苦労された点は? 境田: 私が委員を務めたスポーツ庁の「大学スポーツの振興に関する検討会議タスクフォース」では、今後、日本版NCAAを創設するにあたって、検討すべき論点を整理しただけですので、具体的に横串を刺すのはこれからです。ただ日本サッカー協会や日本バスケットボール協会など中央競技団体には50年以上の歴史があり、それぞれ自主自律の精神で運営がされてきましたし、大学スポーツを統括する大学連盟は、それぞれの中央競技団体及び各大学競技連盟の間に横串を刺していくという作業はかなり骨の折れる大変な作業であることは間違いありませんね。 二宮: B.LEAGUE創設時の苦労に比べると? 境田: 約2年前に、川淵三郎さんと一緒にバスケットボール界の2つのリーグの統合(B.LEAGUEの創設)に関わりましたが、今回の作業量はその比ではありませんので、本当に大変な作業だと思います。さらには大学側も仮に日本版NCAAが立ち上がったとしても、これに簡単に乗ってくれるかどうかもわかりません。なぜなら大学にとって、これまで基本的に大学の運動部の活動は課外活動であると位置付けており、大学側は運動部の活動には主体的に関与しないという立ち位置をとってきたからです。だから学生が競技やトレーニングをする施設や環境の改善を求めたとしても、大学側はなかなか支援してくれないという声もよく聞かれます。 二宮: 活動費も大学の支援ではないんですね? 境田: 運動部の活動費の管理についても、基本的に大学はタッチせず、各運動部が独自に管理を行っており、必要な経費はOBやOGからの寄付に頼ってきたというのが多くの大学の実情です。このような現状を改めるべき、大学側は運動部に対し様々な支援を行うべきとしても、おそらく今の大学の運営側に、それを求めることも簡単ではありません。なぜなら、多くの大学において、その実現のために必要な人材も予算も十分には確保されていないと思われるからです。つまり、国からの運営費交付金の削減や少子化の影響等で、厳しい予算管理や人員定数削減を強いられている大学において、スポーツ専門人材を新たに雇ったり、スポーツに特化した予算を新たにつけるということは、裏を返せばスポーツ以外の他部門の定員枠や予算を減らすということにつながりますので、全学的な合意を得ることが容易ではないのです。 今矢: 僕も横串を刺すことには賛成ですね。ただスポーツには規模の差がすごくありますから、スポーツビジネスが存在する競技に関しては可能性を感じますが、スポーツ全体を対象にするとなると、なかなかハードルが高いなと思います。 境田: 確かに難しいと思います。競技ごとに違う歴史がありますからね。 二宮: 例えばNCAAのようにディビジョンで分けたら、「なぜウチの大学が下なんだ!」と抗議してくる大学も出てくるでしょうね。 […]
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Talk Vol.9 オールインワンでスポーツを盛り上げる(下) 弁護士/東京大学理事 境田 正樹 Sportsful Talk、3回目のゲストは境田正樹さん。 弁護士として活躍する傍ら、「日本スポーツ基本法」の制定、男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」の立ち上げにも尽力されました。 様々なスポーツ団体を見てきた境田さんが見据えるスポーツの新たな可能性とは――。 【スポーツを通じて日本を元気に!】 今矢: JリーグやB.LEAGUEのように地域密着型を図るのはどうでしょう? 境田: そうすべきだと考えています。例えばA県の大学があったとします。その大学がA県の地方自治体やJリーグやB.LEAGUEのクラブ、地元の経済界などと一体となり、連携・協働して、スポーツの振興のみならず、様々な地域振興に取り組んだ方が間違いなく大学にとっても良い成果をもたらすと思います。これまでにプロスポーツチームが築いてきた実績や経験やネットワークと、大学が持つ人材・教育・研究のリソース、地元自治体や地元経済会業がもつ様々な人的リソースや経営リソースとが融合することにより、間違いなく新しい価値創造やマーケットバリューが生まれるはずだからです。 二宮: 私もそう思います。ただNCAA構想で、例えば箱根駅伝や東京六大学野球や東都大学野球のように関東一極集中化に拍車がかかることも懸念されます。 境田: 私は、地方が元気になって、日本全体が元気になるという制度設計をしなければいけないと考えています。日本版NCAAも自治体と連携しないとダメだと思います。大学、自治体だけでなく、例えばJリーグやB.LEAGUEのチームとも協働する。みんなで力を合わせないと絶対うまくいかない。「スポーツを通じて、日本を元気にするという視点で物事を考えよう」とずっと言ってきました。日本には800を超える大学がありますから、そこが1つになって目標に向かっていくことはとても意義のあることだと思っています。 二宮: 先ほど日本版NCAA構想に加えて、障がい者スポーツにも力を入れるとおっしゃっていました。 境田: 大部分の健常者のスポーツ団体は、法人格を取得しており、また長い歴史もあり、元メダリストなど多くのOB、OGに支えられていますので、それなりに団体ガバナンスは機能しています。これまでに蓄積された様々な経営ノウハウも持ち合わせています。これに対し、多くの障がい者スポーツの競技団体の場合は、人材不足や厳しい財政事情により、法人格も取得できないまま、協会の事務担当者がボランティアで事務を担ってきました。 二宮: 協会の連絡先が個人というのはよくありますね。 境田: はい。自宅兼協会事務所というかたちで、自らのマンションやアパートで、協会の事務作業を行ったり、自宅の固定電話をそのまま事務局の連絡先としているような団体も少なくありませんでした。その後、2015年には、日本財団が、「日本財団パラリンピックサポートセンター」を設置し、多くの障がい者スポーツの競技団体のオフィスが1カ所に集約されましたよね。そこでは各競技団体のバックオフィス支援や業務コンサル支援、スタッフ雇用費の財政支援まで行われています。その結果、障がい者スポーツの競技団体のガバナンス体制は劇的に良くなってきたと思います。あとは、2021年までとされているこのパラサポセンターの支援システムが、2021年以降も永続化できるかがカギだと思います。 二宮: 私も何度か訪問しましたが、あそこはとても画期的ですよね。団体ごとを隔てている壁がない。各競技団体とも情報を共有できるし、オールインワンでできますからね。現在、安倍晋三首相が2025年までにスタジアム・アリーナを20カ所整備しようという構想を掲げています。これには必ず反対する人が出てくる。“そんなお金を出すのなら病院を建てなさい”と。だったらヨーロッパのサッカースタジアムのように医療介護施設、託児所、スーパーマーケットを全部1つにまとめてつくればいいと思うんです。そうすればスタジアム・アリーナ建設に反対する人も少なくなるのではないでしょうか。 境田: 確かにおっしゃる通りだと思います。私は、このスタジアム・アリーナ構想については、ただ単に箱ものを作るというのではなく、二宮さんがおっしゃるように、医療介護施設や託児所、スーパーマーケットなど地域に役立つ拠点、地域を活性化する拠点となることが重要だと考えています。私は、さらに、大学内の様々な学知や産業界の知を結集させたイノベーション創出の拠点としてスマートアリーナを位置付けることも一案ではないかと考えています。 今矢: 具体的にはどういうものがあるのでしょう? 境田: 実は、昨年5月に東京大学の中にスポーツ先端科学研究拠点を新しく創設しました。これまで東大の中には、ニューロリハビリテーション、健康医学、コンピュータサイエンス、数理科学、ロボット工学、身体生理学、スポーツ薬理学、バイオメカニクス、ゲノム生命科学など様々なスポーツ関連分野の研究者が多数いたのですが、それぞれが連携・協働して研究を行うことはほとんどありませんでした。今回のスポーツ先端科学研究拠点では、それら研究者が一体となり連携・協働して先端スポーツ科学研究を推進する計画を立てています。 今矢: そこでは何が行われるのでしょう? 境田: この拠点の主要な研究計画の1つは、テーラーメイド型アスリート強化プロジェクトです。このプロジェクトでは、各競技のトップアスリートや学生アスリート、さらに一般の人々から収集された様々なバイタルデータや動作解析情報、そして各研究分野で過去に蓄積された研究データ、さらにこれまでに発表された論文などを、人口知能やスーパーコンピュータなど高度情報解析装置を用いて統合的に解析します。それによって、アスリートに関する統合・知識データベースを構築するとともに、個々のアスリートに最適のトレーニング方法やリハビリ方法を開発し、提供することを目的とするものです。また、学内のVR(仮想空間)やAR(拡張現実)の最新技術を活用し、新たなトレーニング手法の開発、スポーツと社会をつなぐための観戦体験拡張、スポーツの記録・再現・解析手法の新たな開発などにも取り組みたいと考えています。これらによって日本のスポーツ界全体を科学的にサポートすることができる研究基盤を構築することができればと考えています。 […]
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Talk Vol.7 スポーツはビジネスになる(下) 東北楽天野球団元オーナー/U-NEXT特別顧問 島田 亨 2回目のゲストとして登場いただくのは、島田亨さん。 プロ野球東北楽天ゴールデンイーグルスの球団社長、オーナーとして活躍しました。 2004年プロ野球再編問題で誕生した新球団を参入1年目で黒字経営に導いた手腕は高く評価されています。プロ野球球団経営は儲からない。そんな常識を覆した島田さんが語るスポーツビジネスの現実と未来とは――。 【地域との連携】 二宮: 「東北楽天ゴールデンイーグルス」というチーム名は地域密着であり、法人としてのメリットを考えた場合の非常にいい落としどころのような気がします。 島田: サッカーのJリーグが法人の名前を付けなかったこともあり、僕らも地元の方々から「楽天を付けるべきではない」との声は結構ありました。そこは受益者負担の反対の考え、“負担者受益”です。オーナー会社が一番リスクを持ってやっていますから、せめて名前は売りたかった。 二宮: “負担者受益”とはいい言葉ですね。資金を出している以上はリターンも欲しい。それは当然のことです。 島田: そうでなければ、なかなかお金は出せないと思います。 二宮: あとは「仙台」ではなく「東北」と名乗りましたよね。そこには何か理由があったのでしょうか? 島田: まず東北の地にプロ野球団が千葉ロッテのセミフランチャイズとしてしか過去にはなかった。だから、ある日本の一角のムーブメントとして球団をつくろうという意図がありしました。 二宮: 地域との連携という意味では、少年野球教室や学校訪問を行うこともひとつです。地域といい関係を結ぶために役立ったんじゃないですか。 島田: はい。野球が商売ですから、野球以外のことでやるよりも野球に繋がることで地域と関わっていくことが大事だと思います。 今矢: 確かにそうですね。 島田: そういう意味で言うと、野球教室は2つに分けられます。1つは長期的なファンづくり。例えばメジャーリーグのニューヨーク・ヤンキースは“何個子供にキャップを被せることができるか”を考えています。確かにロゴマークが入ったキャップをもらって、被っているとファンになるんですよね。野球教室はそういうアプローチのひとつでもあります。 二宮: 長期的な戦略で言えば、早い時期に東北楽天ファンにさせるということですね。 島田: はい。あとはJリーグで言うところの下部組織のような選手を育成していく仕組みが野球にはなかった。それを見据えながら、本格的な野球チームをつくって地元の子供たちを、地元のチームが指導する。そのチームが全国大会で勝つと、地元の人たちもうれしい。それがイーグルスを応援することにつながると思っています。 【“球団努力”ではなく“球界努力”】 二宮: 04年秋に楽天が球団参入に手を挙げた時には、今矢さんはどう思われましたか? 今矢: 新しい産業のプレイヤーが参画することはすごくいいことだなと感じました。初年度黒字化というセンセーショナルなメッセージは、自分たちの球団のためではなくリーグ全体、あるいは野球全体に対してのビジョンがあってこそだと。 […]
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Talk Vol.6 スポーツはビジネスになる(上) 東北楽天野球団元オーナー/U-NEXT特別顧問 島田 亨 2回目のゲストとして登場いただくのは、島田亨さん。 プロ野球東北楽天ゴールデンイーグルスの球団社長、オーナーとして活躍しました。 2004年プロ野球再編問題で誕生した新球団を参入1年目で黒字経営に導いた手腕は高く評価されています。プロ野球球団経営は儲からない。そんな常識を覆した島田さんが語るスポーツビジネスの現実と未来とは――。 二宮清純: 島田さんは東北楽天の球団経営に関わってきました。私も長いことプロ野球を取材してきましたが、一番驚いたのは1年目に黒字を出したことです。“プロ野球は赤字が当たり前”という刷り込みがあったので、野球関係者にとても衝撃だったのではないでしょうか。これは最初から自信がありましたか? 島田亨: 実はですね。初年度の黒字はなるべくしてなったんです。 今矢賢一: それはなぜでしょう? 島田: 野球は1シーズン通して見た時に売り上げが立つ期間と、コストだけが出る期間があります。僕らが参入した時は秋季キャンプも終了していて、コストがかかる時期は過ぎていました。つまり1年間でかかるべきコストの3分1はかからない状態でスタートできたんです。だから逆に言えば、黒字になって当然なんですね。 今矢: なるほど。ファンクラブにカテゴリーをつくられるなど初年度からいろいろな工夫をされていましたね。 島田: そうですね。売り上げをある程度出せば、黒字になるのは分かっていました。その時はどこの球団も広告宣伝費の一環として、極端に言えば“黒字になる必要はない”という意識でやっていたところがありました。結果的にはそれで近鉄の赤字を親会社が補填できなくなり、球団がなくなってしまった。だから「プロ野球経営でも黒字が出る」とのメッセージを打ち出そうと考えていました。 二宮: 島田さん的には“確信犯”だったんですね。 島田: ええ。「プロ野球を経営しよう」というマインドセットをもっていったことによって、初年度に出した中長期事業計画の中で、フルシーズンを通しての黒字化は10年後までに果たすと考えていたんです。同時に日本一になるとも言っていました。初年度に勢いをつけたことで、スポンサーも集まっていただき、好循環になった。結果的には9年目の13年には黒字を達成することができて、有り難いことに日本一にもなれました。 二宮: まさに計画通りですね。黒字化の要因のひとつには球場経営が挙げられます。 島田: ホームスタジアムは宮城県営球場です。宮城県との契約で改修に関する費用は球団が出す代わりに球場使用料を減免するという取り引きを結びました。 二宮: 物販やチケット収入の何割かは譲渡するかたちですか? 島田: いえ。それは全額入ります。唯一、県とシェアしたのは球場の命名権ですね。 二宮: 球場ビジネスに関しては、ビールの売り子の動きまで、注目されたと伺いました。 島田: はい。売れている子はデータで出ていますから、「なぜ売れているのか」を現場に聞いたりしました。あとはそのノウハウを横展開すればいいので、難しい話ではないんです。 二宮: “真実は細部に宿る”と言いますが、それまでの球団経営は大雑把な部分もありましたよね。 島田: 役割分担のような感覚なんですね。シーズンが始まるまではいろいろな準備が必要です。それは経営戦略そのもの。いざシーズンが始まるとチームに関われる部分は少ない。オンシーズンは動いている興行をちゃんと見て、どう改善していくかなんです。 […]
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Talk Vol.5 スポーツが繋ぐ無限の可能性 (下) ゆるスポーツ コピーライター/プロデューサー 澤田智洋 「ゆるく、ポップにする」ことで、スポーツの新しい楽しみ方を提案している ゆるスポーツプロデューサーの澤田智洋さん。 競技普及を超えて、スポーツの持つ可能性はさらに広がりを見せています。 今矢:そういうことですよね。今まで響かなかった人たちにどう響かせるかと。競技普及以外にもゆるスポーツを使ってやっている試みはありますか? 澤田:最近は介護施設などに、リハビリの代わりになるスポーツを提供しています。「ゆるスポヘルスケア」というプロジェクトで、「トントンボイス相撲」「こたつホッケー」「打ち投げ花火」の3種目を創りました。「トントンボイス相撲」は声で力士を動かします。発声するとリハビリになります。「こたつホッケー」はテーブルにデジタル映像化したコートやパックでプレーするデジタルホッケー。腕の伸縮運動になります。「打ち投げ花火」は天井に映し出された的へ風船を当てるスポーツです。こちらは腕の上下運動に繋がります。どれも単調なリハビリだと続かないので、スポーツにしようと考えたんです。 今矢:リハビリのメニューがいくつかあるんですね。 澤田:そうですね。移動式サーカスみたいに、僕たちがスポーツを持って行くという感じです。ただ結構デジタル系が多く、コストがかかるので、アナログ系スポーツを創る重要性も感じています。 今矢:もし継続的に行うには施設に導入してもらわないといけないですもんね。 澤田:最近ですとスポーツに限らず、「ゆる体操」も多く開発しています。例えば21世紀型のラジオ体操「ざっくり体操」というものがあります。ファシリテーターは、ざっくりとした指示だけ出すんです。「はい、肩~」「はい、回して~」「はい、ゆっくり~」などなど。それに対して、「肩」と言われれば、各々の解釈で、回してもいいし、ねじってもひねってもいいよと。当然全員の動きが揃わないですが、それがいい。 二宮:でもやらされている普通の体操ではなくて、自分で考えることで頭の体操にもなりますよね。 今矢:周りを見るとまた得られる情報があるんでしょうね。 澤田:そうなんです。お年寄りで足が動かない方は屈伸ができなくても、ざっくりとした指示ならそれなりにできることはあります。要は自由度をある程度あげることで、「自分だけできない」という負の感情を逃しています。 二宮:一口にスポーツとは言っても1位を狙うエリートスポーツばかりではない。定義は少しばかり曖昧にした方がいいかもしれませんね。 澤田:スポーツは超多面体だと思っていて、僕らが見ている面って限られているんですが、裏側を覗いてみたらいろいろな顔がある。それがすごく面白い。例えば僕らはスポーツを「楽しい新薬」と捉えています。それは、フィジカル、メンタル、ソーシャルの症状を解消してくれる新薬。そこで、ゆるスポーツを薬のように処方する施設を作りたいと思っています。「スポーツホスピタル構想」というプロジェクトとして走り始めています。 今矢:それは面白いですね。 澤田:例えば、スポーツを処方するドクターをアスリートにお願いすれば、セカンドキャリアにも繋がるかもしれない。患者さんも、別の患者さんのために新しいスポーツを創ってもいい。いろいろな関係が生まれるといいなと。スポーツを通じた「関係創生」ですね。関係を創生するにあたっては、スポーツが適しています。人と人の距離を短時間でぐっと縮めてくれる。本当にスポーツはすごい。僕にとってスポーツは世界で一番苦手なんですが、世界で一番尊敬しているものでもあります。
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