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Columnコラム

2013.11.25スポーツで人口を増やした島

「日本で一番元気な島です」

 

そんな紹介をしている自治体がある。日本で最も西に位置する市、沖縄県石垣市である。

 

1年中温暖な気候と、豊かな自然に惹かれ、石垣市を訪れる観光客は増加傾向にある。この3月には「南(ぱい)ぬ島石垣空港」が完成してアクセス面が向上したことも追い風となり、今年度の観光客は過去最多の95万人に達する見込みだ。

 

以前は過疎化がみられた島も、近年は人口が増え、10月末現在では48,735人。30年前と比較すると約6,000人も増加している。家族で移り住むケースも多いため、14歳以下の人口が65歳以上の高齢者を上回っている。全国的に超高齢化と少子化が進む中、その逆の流れが起きているのだ。

 

観光客と人口が増えた大きな背景にはスポーツの存在があげられる。石垣市ではスポーツを通じた観光を「総合まちづくり産業」と位置づけ、キャンプや合宿の誘致、大会開催などに力を入れてきた。今では野球の千葉ロッテやサッカーのジェフユナイテッド千葉が春季キャンプを張り、トライアスロンワールドカップも18年連続で開催された(来年は休止)。その他の競技でもトップ選手がトレーニングで多数訪れている。

 

「トップアスリートやトップチームのキャンプ、大会を誘致することで相乗効果をいかにつくり出すか、どうやって小さな島の子どもたちに大きな夢を与えていくかを考えている」と市の担当者は力説する。選手たちが多数、島を訪れれば、施設も改善する必要が出てくる。必然的に地元での雇用が促進され、多大な経済効果を生むことになる。

 

ただ、石垣市は決してハコモノありきの考え方ではない。選手たちの要望に応じて施設を整えることでアスリートに最適な環境をつくりだしている。たとえばサッカーの練習場は、雨が多い石垣の気候を踏まえ、水はけの良さを徹底して追求したつくりになっている。どんなに雨が降っても水が浮かないピッチは、この1月に自主トレをした日本代表の本田圭佑(CSKAモスクワ)も「世界中を見ても、こんな素晴らしいところは初めて」と絶賛したという。こういった評判が新規開拓やリピーターを増やすのだ。

 

一流選手の姿を間近で見られれば、子どもも大人も競技に関心を持ち、取り組むようになる。たとえばトライアスロンの大会をスタートして以降、地元の子どもたちは水泳や自転車を始めるようになった。その中からはプロロードレーサーの新城幸也といったトップアスリートが誕生している。

 

2020年の東京五輪やパラリンピックは東京だけのスポーツイベントととらえる向きもあるが、実際はそうではない。各国の選手団は本番直前に、日本国内の施設を利用してトレーニングを実施するはずだ。さらに言えば、2019年のラグビーW杯、2018年の平昌冬季五輪・パラリンピックでも国内で選手たちが事前合宿を行うことが予想される。

 

その誘致合戦が今後、始まっていくことを考えると、地方にはスポーツを通じて活性化を図る絶好のチャンスが到来したと言える。スポーツに特化し、まちを元気に――。石垣市に行けば、そのヒントをたくさん見つけられる。


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