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Columnコラム

2011.07.20スポーツのチカラ

-スポーツには人を救うチカラがある。

 

それを改めて感じた取材だった

 

過日、車いすバスケットボールの及川晋平選手にインタビューする機会があった。
彼は井上雄彦さんの漫画「リアル」のモデルにもなった日本を代表するプレーヤーである。

 

自ら”バスケバカ”と称するほどのバスケ好き。
高校もバスケットをやるために進学したようなものだった。
そんな人生を暗転させる出来事が起きたのは高1の冬だ。
練習中、右足に痛みが走った。

 

「肉離れかな……。オレもアスリートなんだな(笑)」

 

ところが痛みは治まるどころか、どんどん日を追うごとに増していく。
最後は眠れない程の激痛になり、慌てて病院へ行った。

 

診断結果は骨肉腫。いわゆる骨のガンである。
腫瘍ができたヒザの間接を取り除き、人工関節に置き換える手術を受けた。

 

「とにかく早く戻らなくちゃ……」

 

そんな及川の願いもむなしく、病状は深刻の度合いを増していく。
さらに検査すると、既にガン細胞が肺に転移していることが判明。
命にかかわるため、右足を切断せざるをえなくなった。

 

「足かけ5年くらい入院していましたね。
右足を切断してからも右と左、1度ずつ肺に転移しているんです。
もう抗がん剤も使えないくらい白血球が下がって、
これ以上治療はできないと……。
正直、また再発したら死ぬかもしれないという思いは常にありましたね」

 

-もうバスケットはできない…

 

目の前が真っ暗になりそうな状況を救ったのが車いすバスケだった。
「ずっと一流プレーヤーを目指していましたから、
最初は乗り気ではなかったんです。
でも、初めて見た時にバスケットの面白さ、
ボールを持つ感触が一気に甦ってきたんです」

 

死の恐怖が付きまとう中、バスケットをやっている時だけは生を実感できた。
その後、及川選手は米国に留学。
バスケットの本場で基礎を学び、シドニーパラリンピックに出場した。
今は自ら立ちあげた車いすバスケのチームで
コーチングプレーヤーを務めながら、若手の育成にも尽力している。

残念ながら現在、この国では年間約3万もの人間が自ら命を絶っている。
彼らの苦しみや絶望に手を差し伸べる存在はどこかになかったのだ
ろうか。
その役割の一翼をスポーツは担えると信じている。

 


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