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Columnコラム

2010.01.11スポーツ大国へ、発想の転換を!

2010年はスポーツイヤーである。2月にはバンクーバー五輪、6月にはサッカーW杯南アフリカ大会が開催される。開幕が近づくにつれて、メディアはメダル獲得予想や、日本代表の勝敗予想で盛り上がることだろう。

 

しかし4年前を思い出してほしい。06年のトリノ五輪、大会前はスノーボードやスピードスケートなどの競技で”メダル確実”との報道が盛んになされた。ところがフタを開けてみると、日本勢は不振続き。女子フィギュアスケートの荒川静香が金メダルを獲得しなければ、メダルゼロの大惨敗に終わるところだった。

 

そしてドイツW杯。日本はオーストラリア、クロアチア、ブラジルと同組に入った。「引き分けが2つで勝ち点2。ブラジルにはどう転んでも勝てない」。ある元日本代表はテレビ番組での打ち合わせで私にこう打ち明けた。ところが、いざ番組が始まると前言を翻して楽観的な予想に終始した。「あれは予想じゃなくて希望的観測じゃないの?」。そう水を向けると、彼はこう返した。「本当のことを話すと非国民になってしまう」

 

年末年始のスポーツ特番を見ていると、4年前とメディアの状況はあまり変わっていない。元選手や評論家たちはリップサービスのオンパレード。希望的観測が外れても発言者は無傷だが、期待が失望に変わった国民の不満は、全て現場に向けられる。

 

別にペシミストになれと言っているわけではない。臆病に振る舞えといっているわけでもない。しかし、陽だまりで見る夢のような希望的観測がこの国の選手たちにプラスの材料をもたらすだろうか。太鼓持ちはほどほどにして現実を直視し、その上で建設的な提言を行なうべきではないか。

 

-国際大会で結果を残すことと、スポーツの発展は別物である。

乱発されるリップサービスの背景には「メダルさえ獲得できればよい」「勝ちさえすればよい」とのスポーツに対する意識の”貧困さ”も垣間見える。たとえば、国家管理、中央集権型で選手の強化体制をとった旧ソ連や旧東ドイツは、その後どうなったか。「国威発揚」をベースにした金メダル至上主義はドーピングなどの深刻な問題を引き起こした。

 

「金メダル大国」と「スポーツ大国」は似て非なるものだ。もちろん国際大会で活躍する選手たちは、しっかり国としてバックアップすべきだが、もっと大切なのは、このコラムでも何度か書いてきたように底辺を拡大することである。競技が普及し、人材が育てば、その結果として世界で勝てる人間が出てくる。

 

スポーツを通じた豊かな国づくり――。このスポーツイヤーが、そのきっかけの1年となることを願っている。

 

 


 

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