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Columnコラム

2013.06.25セカンドキャリア支援の誤謬

アスリートのセカンドキャリア支援がスポーツ界の大きなテーマになって久しい。

 

スポーツの世界は現役で活動できる時間が限られている。全員が指導者になれるわけでもない。引退後、社会の中でどんな仕事を見つけ、どう生きるか。日本のアスリートでは花形と言えるプロ野球選手でさえ、7割以上が将来に不安を抱いているとの調査結果がある。

 

プロスポーツ選手ともなると、その肩書は一生ついて回る。元選手が犯罪で逮捕されると大きくメディアで取り上げられ、「現役時代からセカンドキャリアに備えて、もっと教育しておくべきだった」との意見をよく耳にする。

 

確かにセカンドキャリアに向けた取り組みは大切である。私もそれ自体を否定するものではない。ただし、資格取得やビジネススキルを学ぶことが、すべての選手にとって本当にプラスになるのか。

 

今春より関東に進出した女子プロ野球リーグで、こんなことがあった。同リーグではセカンドキャリア支援策として、選手を専門学校に通わせ、柔道整復師などの資格取得を促している。

 

騒動が起きたのは開幕戦直前だった。リーグ側が専門学校を卒業できなかった8選手に対し、試合出場禁止、スタメン出場禁止といったペナルティを科したのだ。お目当ての選手が試合に出られないと知ったファンからは批判の声があがった。

 

リーグ側はセカンドキャリアサポートを「発足当初からリーグの活動方針として重要視」してきたことを理由に、「試験に合格するなど個々の能力云々ではなく、取り組む姿勢を基準」に処分を決めたと説明している。しかし、これは本末転倒である。

 

彼女たちの職業はプロ野球選手だ。最も自らをアピールし、自己実現できる場は学校ではない。グラウンドである。まずは、ここを押さえておく必要がある。

 

「セカンドキャリアでつまずく選手は、不完全燃焼でくすぶっている人間が多い。競技に対する未練があるから、どうしても新たな仕事に思い切って飛び込めない。それだったら現役の間に徹底的に競技に打ち込ませ、”もう、やるだけのことはやった”と思える場をつくってあげることも重要ではないでしょうか」

 

引退後、ビジネスの世界でも成功している元選手からこんな話を聞いたことがある。「未練がなくなれば次へ向かう覚悟ができるんです。覚悟があれば苦手な勉強だってしますよ。現役中に気乗りしないまま机に向かっているより、このほうがよっぽど身になる」とも。

 

セカンドキャリア支援は、あくまでも将来を見据えた”手段”のひとつだ。それ自体が”目的”になってはいけない。まずはファーストキャリア、その次がセカンドキャリアである。セカンドキャリア先にありきという風潮には違和感がある。