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Columnコラム

2010.02.15パラリンピックは”リハビリ”ではない

バンクーバー五輪に続いて、3月12日からはパラリンピックが同地で行われる。ブルータグ所属のアスリートでは、シットスキーに谷口彰選手、バイアスロンとクロスカントリーに佐藤圭一選手が出場予定だ。この4年間の練習の成果を本番にぶつけ、好成績を日本に持ち帰ってほしい。

 

-この国において障害者スポーツは未だに「障害者のリハビリの一環」とみる向きが少なくない。

パラリンピックに参加しただけで「勇気をありがとう」といった反応が寄せられるところに、その一端がうかがえる。しかし、彼らは健常者から同情を得るためにプレーしているわけではない。あくまでも勝利や自己記録更新を目指して戦い、その過程で自らの成長を実感している。これこそがスポーツの良さであり、そこに健常者との違いはない。

 

害者スポーツに対する”偏見”は国のシステムにもよく表れている。日本ではオリンピックを文部科学省が管轄する一方で、パラリンピックは厚生労働省の所管になるのだ。オリンピックには以前からメダリストに対する報奨制度が存在したのに対し、パラリンピックに導入されたのは2008年の北京大会から。メディアの扱いもオリンピックとパラリンピックとでは10対1、いやそれ以上の差がある。

 

それだけではない。私が納得できないのは、障害者スポーツのトップレベルの選手たちがナショナルトレーニングセンターを自由に利用できないことだ。ナショナルトレーニングセンターは、「我が国におけるトップレベル競技者の国際競技力の総合的な向上を図るトレーニング施設」と位置づけられ、各競技のオリンピック候補選手が頻繁に練習を行っている。

 

「トップレベル競技者の国際競技力の総合的な向上を図る」ことが目的であれば、当然、その中には障害者スポーツも含まれるべきだろう。だが、実情は全く異なる。基本的に施設の利用はJOC(日本オリンピック委員会)の強化指定選手や、各競技団体から推薦を受けた選手に限られているのだ。

 

車いすテニスで史上初の年間グランドスラムを達成した国枝慎吾選手に、そのことを訊ねると、「あそこの建物は文科省。僕らは厚労省の管轄なので。悲しい話ではありますが……」と表情を曇らせた。トレーニングセンターを管理・運営している独立行政法人日本スポーツ振興センターは文科省の外郭団体。タテ割り行政の弊害が、こんなところにも出ている。

 

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国枝選手はこうも語っていた。
「とにかく僕自身のプレーを見てもらえれば、確実に”これはスポーツなんだ”と理解してもらえると思うし、”かわいそう”という先入観も吹き飛ぶと思うんです」
この言葉は多くの障害者アスリートの気持ちを代弁したものだろう。障害者スポーツをリハビリの延長線上に位置づけてはならない。

 

 


 

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