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Columnコラム

2013.04.25変えるべきものと、変えてはいけないもの

私はルールを金科玉条だと考える者ではない。しかし、これはあまりにも行き過ぎではないかと思う。

 

過日、国際野球連盟(IBAF)と国際ソフトボール連盟(ISF)が「世界野球ソフトボール連盟」(WBSC)を 立ち上げ、五輪復帰へ動き始めた。野球とソフトボールは異なる競技であるが、2020年の夏季五輪の実施競技は残り1枠をレスリングや空手などと争う状況だ。共倒れを防ぐため、タッグを組んだかたちである。

 

WBSCでは男子の野球と女子のソフトボールを同じスタジアムで実施し、参加チーム数を絞って期間を限定することでIOCの理解を得たい方針だ。IBAFのリカルド・フラッカリ会長は「五輪では9イニング制ではなく7イニング制も検討する」とルールの抜本的な見直しにも言及している。IOCサイドはテレビ放映の関係から競技時間の短縮を求めており、その意向に沿った発言である。

 

ただ、ちょっと待ってもらいたい。9イニング制は公認野球規則にも明記された野球の根幹である。それを、いくらIOC側からの要請とはいえ、簡単に変えてしまってよいものだろうか。

 

かつて米国でサッカーのW杯が開催されるにあたり、「ペナルティエリア外からのシュートで得点が入った場合は2点にすれば、おもしろくなる」という声があがったことがある。3ポイントシュートのあるバスケットボールや、1回のタッチダウンで6点が入るアメリカンフットボールが盛んなお国柄から生まれた発想だろう。

 

だが、もし、この変更を認めてしまえば、サッカーは高得点を狙うミドルシュートの応酬になるだろう。 ストライカーとディフェンダーのゴール前でのせめぎ合いは少なくなってしまう。これはサッカーの魅力を半減させてしまうに違いない。

 

野球にしても9イニングだからこそドラマが生まれる。たとえば3月のWBC、2次ラウンド初戦の日本-台湾。あの試合が7イニングだったら、台湾先発の王建民がほぼひとりで投げ抜き、日本に反撃のチャンスは生まれなかったはずだ。必然的に最終回の劇的な同点シーンもなかったことになる。

 

試合時間を短縮するなら、他に工夫すべきところがあるのではないか。たとえば高校野球の試合は約2時間だ。日本のプロ野球も、かつては2時間台だった。あの長嶋茂雄がサヨナラホームランを放った天覧試合も2時間10分で試合を終えているのだ。

 

世には変えるべきものと、変えてはいけないものがある。この見極めを誤ると取り返しのつかないことになる。これはスポーツの世界に限らない話である。