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Columnコラム

2014.01.25準備こそ栄光の条件

長くスポーツの取材をしてきて、大舞台で結果を残す選手や団体には共通項がある。「準備力」だ。あらゆる可能性を考え、想定外の事態にも対応できる徹底した準備が事前になされているか。これが勝敗の分水嶺となる。

 
思い出されるのは北京五輪の陸上男子400メートルリレーだ。トラック種目で日本男子五輪初のメダル(銅)に輝いた。この種目、前回大会のアテネで表彰台を占めた英国、米国、ナイジェリアをはじめ、6チームがバトンミスによる失格、途中棄権で姿を消した。そのため、日本のメダル獲得は”漁夫の利”と見る向きもある。

 

だが、このメダルは単なる幸運や偶然の産物ではない。日本チームの周到な準備が呼び込んだ表彰台だったのだ。

 

リレーでは各走者がスタートのタイミングを示す目印としてテープをトラックに貼りつける。前の走者がその目印を通過したところで次走者が走り出すと、きれいにバトンがつながるというわけだ。

 

ここまでは、どのチームでもやっている準備である。しかし、日本は主催者側が用意した銀色のテープとは別に、白のテーピング用のテープをスパイクに詰めて持ち込んでいたのだ。

 

予選当日、北京は雨が降り続き、トラックには水が浮いていた。しかもスタジアムの照明がまぶしく、銀色のテープは濡れたトラックとともにキラキラと光り、目印の役割を果たせなかったのである。

 

「(失格になった)英国の選手はバトンパスの際、スタートがめちゃくちゃ早かったんです。NHKが番組でこのリレーを検証した際、本人がインタビューで”テープが光って見えなかった”と証言していましたよ」

 

日本のアンカーを務めた朝原宣治はそう語っていた。白のテープを準備した日本は、見事なバトンパスを披露し、予選を突破。決勝で銅メダルを勝ちとってみせたのだ。

 

日本チームは北京大会の数年前から、各選手のタイムを測り、どの位置でバトンを渡せばスムーズにつながるかを解析していた。それは朝原によると、「20メートルのバトンゾーンで、ラスト3~5メートルの部分」だという。この地点だと、前の走者のスピードが落ち過ぎず、次の走者も加速した段階でバトンを受け取ることができる。一朝一夕ではなく、長い時間をかけて積み重ねてきた準備が、本番で花開いたと言えるだろう。

 

ラグビー日本代表で主将を務める廣瀬俊朗も、こんな話をしていた。
「ラグビーは楕円のボールがどちらに転がるか分からないからおもしろいという人がいます。でも、僕はチームでいい準備をしているほうにボールは転がってくると思うんです。いい準備をすれば自信があるから、何が起きても慌てません」

 

間もなく開幕するソチ冬季五輪に、夏のサッカーW杯と、2014年はスポーツイヤーである。大会に出場する日本の選手たちには、「Good Luck!」ではなく、「Good Ready!」とはなむけの言葉を送りたい。