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Columnコラム

2013.07.25灼熱の甲子園の是非

高校野球の季節が今年もやってきた。49代表が揃っての夏の甲子園は8月8日に開幕する。都道府県予選で母校の結果に一喜一憂した読者も多いだろう。

 

夏の甲子園といえば、炎天下の大会だ。特に近年は35度以上の真夏日を記録する日も多く、熱中症とみられる症状で体調を悪くする選手や関係者、応援の生徒が相次いでいる。

 

今年の各都道府県予選でも、7月11日には、埼玉で1試合に3名の選手が暑さから手足のしびれを訴えて途中交代した。17日には新潟で巻総合高の監督が試合中に倒れ、病院へ運ばれた。24日は静岡で球場へ応援に駆け付けた生徒16人が体調不良を起こし、救急搬送されている。

 
悲しいことに高校球児が熱中症により、命を落としているケースもある。日本スポーツ振興センターがまとめている学校事故事例検索データベースによると、過去5年間で練習中や練習後に死亡した球児が2人も出ている。小中学生も含めると、1975年からの2010年までの35年間では35人が亡くなり、これは他競技と比較して圧倒的に多い。

 

しかし、こういった事実は新聞やテレビで大々的に報じられることは少ない。なぜなら甲子園大会を主催しているのは新聞社であり、テレビ局にとっても夏場の貴重な放送コンテンツだからだ。

 

トーナメント方式で負ければ終わりの高校野球では、エースピッチャーが投球過多によって肩やヒジを壊し、その後の選手生命を絶たれる問題が長年、指摘されてきた。日本高校野球連盟は93年夏より球児の肩ヒジ検査を導入し、今年からは準々決勝後に休養日を設けるなど、少しずつではあるが対策を講じてきている。

 

だが、高校生が40度を超えるとも言われる灼熱のグラウンドでのプレーを余儀なくされる構図は変わらない。熱中症は一歩、間違えれば死に至る。夏場の気温が年々上昇する中、本来は故障の防止以上に真剣に取り組まなくてはいけない問題ではないか。

 

かつて私は主催新聞社の高校野球事務局長に対し、選手の負担軽減に「ナイトゲームの実施」を提案したことがある。その時の返答は次のようなものだった。

 

「高校野球ファンはプロ野球ファンとは違う。それに夜遅くまで高校野球をやるのはどうか」

 

あくまでも興行が第一で、選手の健康は二の次――。そんな主催者サイドの姿勢が透けてみえる発言に愕然としたことを覚えている。

 

白球を巡る炎天下での汗と涙のドラマ……。そんな高校野球のけがれなきイメージを守ることと、実際の球児たちが安心してプレーできる環境を確保することと、どちらが大切か。答えは言うまでもない。