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Talk Vol.3

スポーツが繋ぐ無限の可能性 (上)

ゆるスポーツ
コピーライター / プロデューサー 澤田智洋

一番苦手なものがスポーツだった

二宮: 澤田さんは世界のあらゆるスポーツ協会のトータルプロデューサーを努めています。
バランスボールを使用して行う「真珠サッカー」、手にハンドソープをつけてプレーする「ハンドソープボール」など、ゆるスポという着眼点が非常に斬新です。そもそも初められたきっかけを教えてください。

澤田: 実は、僕が世界で一番苦手なものがスポーツなんです。男性のステータスとしてスポーツは大きな武器ですよね。小学生の時は、それが顕著に表れる。スポーツができないと、ヒエラルキーの下のほうに置かれます。

二宮:確かに運動神経の良い子がクラスでは人気者になりますよね。

澤田:ええ。クラスにT君という子がいました。彼は足が速いことで先生の評価も高かった。彼のステータスをスポーツが総合的に押し上げていたんです。

二宮:なるほど。失礼ですが澤田さんは、体育の成績は5段階で1とか2とか?

澤田:だいたい2ですね。T君は休み時間、校庭などを走っていて、キャーキャー言われているんです。一方、僕は窓際の席で、誰も望んでいない学級新聞を書いていました。その時に“あ、人生終わったな”と(笑)。僕とT君の間には、太くて流れの速い川が流れているなと。

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二宮:ルビコン川みたいなものですね。越えるのは大変だ!

澤田:そうですね(笑)。本当に向こう岸にはいけないだろうみたいな。ゆるスポーツを始めたのは、そういうのもきっかけですね。

二宮:私は最初テレビで「ハンドソープボール」(写真)を見た時に思わずヒザを打ちました。 普通だったらハンドボールは手に松脂を塗って滑らないようにする。それを逆に滑らせることによって、身体的な長所が失われるわけですよ。 そこで各選手の力の差がなくなるという不思議な現象が起きていました。

澤田:僕たちが大事にしていることは、「新しい不便」をデザインすることです。スポーツは不便を楽しむものではないでしょうか。例えばサッカーのフィールドプレーヤーは手を使ってはいけない。陸上競技も一見自由に見えて、トラックという枠が設けられて走行距離も限られている。ある種の不自由ですよね。人間は自由に動き回りたいのに、制限された中でどうやって100%以上の実力を出すか。それを楽しむことが、スポーツ。

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今矢:新しい不便というのは面白いコンセプトですね。

澤田:ある制約が課されると、他の能力が拡張することもあります。拡張の仕方も人によって違います。多様な「新しい不便」を開発していくことで、それに応じて新しい拡張をしていく人間がいるんじゃないかなと考えたんです。例えば舌でやるスポーツ「スカッチュ」の体験会で、車椅子の女性が優勝したんですよ。「スポーツで勝ったことがなかった」とおっしゃっていました。舌以外を使ってはいけないと不便を与えた時に、僕たちがあたふたした一方で彼女は逆に拡張したということ。

今矢:それは素晴らしいことですね。現在、ゆるスポーツはどのくらいまで増えているのでしょうか?

澤田:今は70種目ぐらいありますね。スポーツクリエイターという新しい職種をつくっていて、80人ぐらいいます。僕自身も創りますが、やるのは主にディレクションです。「こういう課題があるから、こういう方向性で創ってください」と提示して、あとは皆さんでやっていただくかたちです。

今矢:いろいろな業界のクリエイターがたくさんいるんですか?

澤田:そうですね。そもそも、日本には優秀な若手クリエイターが大勢います。ただ、どの業界も大御所やベテランがまだまだ元気です。クリエイター業界はイス取りゲームみたいなもので、大御所はイス取りゲームがうまい。若手がいつまでもイスに座れない状況です。顕著なのがお笑い業界でしょうか。そこで、広告、音楽、映像、などの優秀な若手クリエイターに声をかけ、「スポーツクリエイター」という新しい肩書をつけ、一緒にスポーツを創ってもらっています。スポーツクリエイター自体の数が少ないので、それぞれのPRにもすごくいいんです。皆さんがいろいろなスポーツを創って、メディアで話題になれば本業にも返ってきますから。

< Vol.4に続く>

澤田智洋 (さわだ ともひろ)

1981年7月14日生まれ。コピーライター/プロデューサー。スポーツや福祉のビジネスプロデュースを多く手掛ける。世界ゆるスポーツ協会代表。義足女性のファッションショー「切断ヴィーナスショー」のプロデューサー。『R25』で漫画「キメゾー」連載中。