Talk Vol.12
バスケットボールクラブ経営の現実と未来(上)
千葉ジェッツふなばし代表取締役社長
B.LEAGUE副チェアマン
島田 慎二
Sportful Talks、第5回目のゲストは登場するのは島田慎二さん。男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」の千葉ジェッツふなばしの代表取締役社長を務め、チームは昨季リーグNo.1の観客動員をマークしました。その手腕が認められ、今季からは副チェアマンも兼任。チーム運営とリーグ改革の両輪を担う島田さんが語るバスケットボールクラブ経営の未来とは――。
【チームの再建】
二宮清純: 島田さんは千葉ジェッツの球団代表となって6年目を迎えます。一時は経営難に陥ったチームを再建しました。今季からはチーム名が千葉ジェッツふなばしに変わりました。船橋は競馬場、オートレースと公営ギャンブルが盛んな印象もあります。一方でプロ野球団やプロサッカークラブの本拠地はありません。
島田慎二: 千葉県にはプロ野球の千葉ロッテマリーンズ、プロサッカーのジェフユナイテッド千葉・市原と柏レイソルがあります。だからこそ船橋市にしたんです。千葉市と船橋市のどちらかを本拠地にするか考えた時に千葉市の方がアリーナのサイズは大きいですし、県庁所在地ですから人口も多い。その他にもポジティブな要素はいっぱいありました。それでもプロチームの空白地帯という船橋市のポテンシャルに賭けてみようと思って決断しました。
二宮: 一昨年はホームゲームの累計観戦者数は10万92人。昨季は13万5097人といずれもリーグ最高の観客動員を記録しました。右肩上がりですね。
島田: なかなかここからは上がりづらいんですけどね(笑)。船橋アリーナの占有率が95%ぐらいまできたので、上がり幅という意味ではインパクトのあるものは見せられなくなってきています。
今矢賢一: それにしても占有率90%超えはすごい!
島田: あとは立ち見席を増やしていくしかないですね。今季からは2階自由席を2階自由立見席という名称に変えようと思っています。あとは指定席も増やします。昨季まではいい席を取ろうとしてお客さんが試合開始5時間前から並ぶこともありました。今後はチケット単価が少し上がりますが、試合前の混雑を少しでも緩和できることを優先しました。
【キャラ化とプロ化】
二宮: 今季から新たな試みとしてチアリーダーとプロ契約を結んだそうですね。プロ化することでもっとファンサービスに力を入れたいという意図でしょうか?
島田: ウチのコンセプトとしてはすべてをキャラ化しようと考えています。チアリーダーについてはもう少し目立たせてあげたいと思っていたところで、「プロ化しましょう」と提案があったんです。オフは選手も代表に選ばれれば、チームで地域活動する時に人手が足りなくなることがあります。マスコットキャラクターもいますが、選手以外に動けるキャラクターが欲しい。今はチアリーダー13人のうちの3人をピックアップしてアイドル化しようと考えています。彼女たちを見たくて会場に足を運ぶようになったらいいなと。それにキャラ化はチアリーダーにこだわった話ではなく、ジェッツには小回りのきく広報やモッパー(試合中に飛び散った汗などをモップやタオルで拭く係)もいます。ウチのモッパーはキビキビしていて、すごく動きが速いんですよ。その子たちをキャラクターにして、取材などでメディアにも出てもらっています。
二宮: それはユニークな試みですね。
島田: お客さんが選手だけを見たいと思うのではなく、スタッフも含めて誰かに感情移入できる空間をつくりたいというのがコンセプトです。お客さんが会場をウロウロしていても、誰かとコミュニケーションが取れて楽しい空間にしたいんです。
今矢: チームだけでなく地域のチアリーダーみたいな感じですね。僕らがサポートしていたアスリートの中にNFLデンバーブロンコスのチアリーダーを3年間務めた方がいます。彼女が会場で踊っている時間は全体の一部でしかない。地域のコミュニティセンターや社会活動に参加していると聞きました。
島田: まさにそういう世界ですね。
二宮: つまりは“まちのアイドル”ですね。
島田: 地元に密着できるキャラクターとしていてくれると非常に助かるなと思っています。
今矢: リーグ全体でもプロのチアリーダーは少ないですよね。
島田: 少ないですね。後々、ジェッツのチアが日本代表の応援で踊ることも日の丸を背負うことでひとつのブランドにもなっていきます。ウチのモッパーも「2020年東京オリンピックでモッパーをする」という話をしているぐらいモチベーションが高いんです。
今矢: 各チームとのモッパー対決があっても面白いですね。
二宮: 昔、アメリカで野球のマイナーリーグを取材した時に、切符切りの若者が「将来はメジャーリーグの切符切りになりたいんだ!」と言っていました。その仕事でのトップを目指すと。
島田: それと同じですね。どこにでもプロはいると思うんです。ヒントはマンションの掃除のおばちゃんです。子どもが歩けば、通りかかる近所の人たちに声を掛けているんですよ。掃除もきちんとしている。それを見て、“パートのおばちゃんでさえもここまでプロフェッショナルなんだ”と衝撃を受けましたね。それでジェッツでもキャラ化を始めることにしたんです。
<Vol.13に続く>