Talk Vol.22
セブンズの未来を担う(上)
7人制ラグビー日本代表男女総監督兼男子ヘッドコーチ
岩渕 健輔
第10回のゲストは7人制ラグビー男女日本代表総監督兼同男子日本代表のヘッドコーチを務める岩渕健輔氏です。自国開催のW杯、そして東京オリンピック・パラリンピックを控える日本ラグビー発展のカギとは――。
二宮清純: 7人制ラグビーの男女日本代表総監督の役割を教えてください。
岩渕健輔: 強化の責任者という立場です。私は2017年までゼネラルマネジャー(GM)という肩書きで、男女の7人制と15人制全ての日本代表の強化に携わってきましたが、今はオリンピックに力を入れています。
今矢賢一: 先日の香港セブンズを現地で観ました。すごく良いゲームが多かったですね。
岩渕: それはとても良いタイミングに来てくださいました。男子日本代表が昇格大会で優勝し、シリーズ全戦に出場できるコアチームに復帰しました。
【7人制の強化】
今矢: 私自身は学生時代にサッカーをやっていました。ラグビー大国のオーストラリアに8年住んでいました。高校でのランチタイムはタッチフットをしていましたね。だからラグビーにも馴染みがあって、観ることはとても好きなんです。7人制と15人制では戦術がだいぶ違いますよね。香港で観たアメリカ代表には元陸上選手がいました。その選手はボールを持つと、スピードを生かして独走していました。
二宮: グラウンドの広さは同じで、人数が約半分ですからね。試合時間は基本7分ハーフです。
今矢: だから展開も速くて、エンターテインメント性が非常に高いスポーツだと思います。
二宮: スピードはもちろんですが、ボールも上手くさばけて器用にこなさなければならない。7人制の選手には総合力も必要となってきますね。
岩渕: そうですね。どちらかと言えば足が速くBKの選手が有利です。パワー重視の選手だとある程度、体重を絞る必要もあるかもしれません。15人制では強豪国とは呼べないケニアが7人制で強いというのがひとつの特徴ですね。
今矢: ケニアは一目見ただけで身体能力が高そうな選手が揃っていました。
岩渕: 15人制ではワールドカップに1度も出たことのない国ですが、セブンズでは強豪のニュージーランドを倒すこともありますから。
今矢: 先ほどのアメリカ代表のように別の競技からポテンシャルの高い選手を転向させるという強化策もありますよね。
岩渕: 日本でも実は多方面からの参入を促しています。アメリカンフットボールの選手や陸上選手で試みたことはあるのですが、なかなかうまくいっていません。アメリカは陸上からの転向組が活躍していますが、彼らは1つの競技にこだわらず、いろいろなスポーツをシーズンに応じて取り組んでいます。
今矢: ジュニア時代のクロストレーニングは日本ではあまり多くない。それが影響しているのでしょうか?
岩渕: そこが大きなポイントです。アメリカの選手を見ていると、スムーズに移行できている印象がある。だから陸上からの転向選手でも、ラグビーの動きができているのだと思うんです。
二宮: 7人制ラグビーは16年リオデジャネイロオリンピックから正式種目に採用されました。日本ではやはりラグビーと言えば、15人制のイメージが強い。
岩渕: それは間違いなくあります。15人制のラグビーは進学、就職と卒業後のピラミッドがしっかりとできている。現状でラグビーは15人制の文化に支えられています。
二宮: そういう状況の中、19年W杯は日本で、翌年にはオリンピックが東京で開催されます。15人制、7人制の双方で強化しなければいけない。
岩渕: 15人制の文化で育ってきた選手をどうやって7人制に移行させるか。7人制の文化を15人制とは別につくっていく必要があるかと考えています。
二宮: 将来的には強化を別々にするべきだと?
岩渕: そうせざるを得ないと思います。
二宮: 現状では高校、大学において15人制に比べて7人制チームの数は少ない。
岩渕: 女子は7人制のチームの方が多いのですが、男子はとても少ないです。今後はもっとチームを増やしていく必要があると思います。
<Vol.23に続く>